井上純弌の地平

 個人的に井上純弌って人は嫌いです。
 なぜなら“売る”という視線で作品を作るようになったからです。
 それでも以前はやたら難易度の高い、レベルを上げた作品を作ってる印象でしたが…アルシャードを見ているとどうにもこうにも。遊び手に向上心を要求しない姿勢。

 それ自体、TRPGがビジネスとして存在するためには必要不可欠です。それは別にしかたない。だから彼の視点、彼の発想は理解できる。
 しかし、それは売ることを前提にしたとき、遊び手に与えられるのは適度な刺激と適度な満足でしかない。そこに思想や情熱が入り込む余地がないのだ。

 いつも言うが、トーキョーN◎VA The Revolutionが大成功を納めたのは、ひとえに高みを目指して物語るという個々の向上心がTRPGの持つ魅力を最大限引き出したことに由来する。それ故にN◎VAを遊んだ者達が、いやN◎VAを遊ぶに足る能力を持った者達は皆F.E.A.R.に関わるようになり、ライターやイラストレイターとなったのだ。
 しかし、そこまでの能力を持つものは限られている。だからこそN◎VAは“難しい”システムであり、それを創り手である鈴吹太郎もまた認めていた。けれども、この姿勢がビジネスとして考えたときに容易に限界をみせてしまうこともまた事実だ。

 もっとも売れる商品はそれなりの汎用性が高く、広く受け入れられるものの、ゲームとしての価値には限界があるもの。つまり、そこそこに遊べて、飽きた頃に次のシステムを買いたくなるという感覚を遊び手に与えるという商品だ。
 その意味で井上純弌はもっともその姿勢を明確な形で表していると私は考えているのである。