読書速度

 さっきの話とちょっと関連します。
 アニメのARIAを見て、その微妙さにがっかりした反動で原作を読み直してました。
 まあ、もちろん原作の方が素敵だと思うし、ほっとして安心するんですが、それはそれとして実に久しぶりに『ものすごくゆっくり』漫画を読みました。

 だいたい普通の人は漫画を一冊読みに付き、何分くらいで読むんでしょう。
 私は大体平均すると10分から15分くらいです。割と早めじゃないかなぁとか思うんですが、そうでもなかったりするのかな。

 もともと私は漫画も嫌いじゃないけど、買うのはライトノベルって人間でした。つまり絵よりも文字の方が馴染む人間なんですね。大学生になるくらいまでほとんど漫画は立ち読みって人間でしたから、必然的に漫画は速読って感じになりました。

 だから漫画を読む時には初見の印象的なシーンやセリフを基準に自分の想像力で補うことが多くなります。小説っていう情報が限定されていたものに慣れていたこともあって、どうしてもイメージが優先になっちゃうんですね。

 そうするとどうしても漫画ならではの細かい内容、綺麗な背景やコマ割り、小ネタなども見逃してしまっていて物語の魅力のすべてを理解していないんじゃないかなとは思ってました。

 この傾向は年齢を重ねて、読んだ作品が多くなれば多くなるほど強くなります。蓄積された情報量が拡大することによって認識する過程に省略が起こりやすくなる。累積されたパターンの蓄積から随時似た情報がダウンロードされて、一々すべての情報を認識しなくともわかったような気持ちになれる。
 ジャンプ系の漫画に見られる“王道”な展開はこの人間の認識過程の簡略化のプロセスを利用して『快』を感じる刺激のツボをパターン化することによって成立してますが…。まあ、もっと広範なレベルで“慣れて”きちゃうんですね。

 こうなるともう漫画を見るのに時間はかかりません。大雑把な読み方でも、類型化された脳内情報、経験で補えちゃうし、それはそれで快い。だからそれが悪いわけじゃないんですが、やっぱり見落としちゃうこともたくさんあります。

 とりわけARIA、あるいは最近だと蟲師なんかもそうですね。このような作品だと展開そのものもさることながら、全体を流れる雰囲気自体に作品としての価値を感じますから、結果としてもったいないことをしてるところが大きくなると思っています。

 そんなわけで時間ができちゃったこともあって、じっくりと一話に20分から30分くらいかけて読んでました。そうしたら今まで気付けなかったことを新しく発見したりしてすごく嬉しくなりました。なんだかまったくの新作を読んだ気持ちでしたね。

 で、やっぱりARIAはいいなぁと、この作品の持つ素敵な雰囲気はとっても好きだなぁと改めて感じて、読み終わったあとに穏やかな気持ちになれた気がします。

 たまにはこういうゆったりした読み方もいいですね(笑)。