ダブルクロスリプレイオリジン『残酷な人形』を読んだ。
 オリジンシリーズの二冊目。ダブルクロスのリプレイで、かつ富士見ファンタジアから出てるものとしては通算四冊目か。
 中々に面白い。いや、自分の趣味に合うと言ったほうがいいのかもしれないが。

 もともと私はダブルクロスというシステムについてはそれなりの評価をしていたつもりだ。確かにN◎VAベースだとか、N◎VAベースだとか、N◎VAベースだとか。…まあ冗談はさておいても、やっぱりトーキョーN◎VAというシステムありきで存在するのは間違いなく、決して突出したオリジナリティがあるのかというとそうでもない。文句の付け所はたくさんある。
 唯一“ロイス”システムを除けば。

 このロイスシステムはかなり秀逸だ。昨今のTRPGシーンに於いて『人間関係』のシステム化というのはすでに常套手段となったが、その中でも踏み込んだ人間関係としてはおもしろい部類に入ると思う。ダブルクロスというシステムが「学校」という閉じた社会をテーマにしやすいという点から考えても、このわかりやすい人間関係構築システム、とそれをゲームに昇華するルールは価値があると思う。

 …と、まあ前置きが長くなってしまったが(苦笑)。ようするにこのリプレイはそれなりにおもしろいのである。

 個人的な感覚で言えば、上記したとおりシステムに対しての評価がそもそも高いという裏側にある、著者にしてシステムのクリエイターである“薔薇王子”矢野俊策の趣味と感性に私のそれが似通っているということが挙げられる。
 菊地たけしが書いた以前のリプレイと比べより、ダブルクロスの本義に近い物語とそれを描くためのシステム運用。いずれもが本来作者が表現したかった、私の感性にも近い物語となっていることが評価を押し上げているのは間違いない。

 またイラストレイターでもあるしのとうこがPLとして参加しているというのもおもしろい。
 一巻でも感じたことだが、彼女は間違いなく現役のTRPGプレイヤーであり、そして“上手い”プレイヤーと評価するに足るテクニシャンもであると言えるだろう。
 一巻で主人公のサブといった立ち位置だったが、今回は堂々の主役。見事に演じきったその才能は絵描きであるというだけではなく、表現者としての多才さを感じさせてくれて嬉しい。
 昨今の絵描き、あるいは物書きはどちらかというと表現が単純化しやすい傾向にあると私が感じる中ではこういうマルチに表現する力があるというのは将来に向けても安心して見つづけることができるともいえるだろう。

 もちろん問題点もある。
 最大のものはもう一人のイラストレイター佐々木あかねである。しのとうこという美麗なイラストレイターを起用しているにも関わらず、へたくそな三等身萌え絵が割り込むことでしのとうこのイラストの印象までも減じてしまっているのではないだろうか。
 そもそも一つの作品に二人もイラストレイターを使う意味がどこにあるだろう。確かにイラストを描く労力は並大抵ではない。だが、作品としての完成度はそういったものとは違った価値の上にあるのではないだろうか。
 商品であるのだから、といういいわけはできる。言い返す言葉も特にはない。だが、しのとうこが“上手い”からこそそれを活かしてほしいと願うのだ。

 何より、こういうったリプレイの最大のポイントは読んだ後でそのシステムを遊びたくなるかどうかという点に尽きると思う。
 そういう意味では、私にとっては十分に成功したリプレイだったのではないだろうか。
 是非三巻も同じクオリティで面白いものを描いて欲しいものである。