GM座談会

 Role&RollのVol.11を買いました。んでもって、特集のひとつにGM座談会というのがあったわけですが。これは久しぶりにいい記事だと思いました。

 河嶋陶一郎/北沢慶/小林正規/中村知博の四人がマスタリングについて語っているわけですが、この人選はおもしろいですね。書いてあるようにTRPG業界では中堅どころに位置するこの四人。いずれも第一世代として名を成した現在の役員クラスではなく、実戦の中で自らを磨きつづけているからこそのリアルさは遊び手にとっても近しく、それゆえに実践的な感覚を共有できます。

 そんな中、私の素直な感想としては一番河嶋さんに共感できました。SNEからF.E.A.R.という業界の流れにあって、おそらくはF.E.A.R.の、より正確に言えば「トーキョーN◎VA」を踏み台にしてきたスタッフが織り成す次の一歩を進んでいる冒険企画局のキーマンとして、彼は間違いなく最先端のゲームデザインに成功していると思うのです。

 TRPGはSNEに始まり、物語るという行為がF.E.A.R.によって大成され、その次の段階に進むことが求められています。時代背景としてSNEもF.E.A.R.も独自路線としてビジネスは軌道にのっているかもしれません。しかし、それゆえの手詰まりを私は感じています。
 変化対応の遅い、古いままのSNEとN◎VA以降、形式的に完成したF.E.A.R.システムを定型化するだけで止まってしまったF.E.A.R.。この二社に私は半ば諦めに近い感覚で、「商品ビジネスとしてのTRPGという遊びの限界か」と感じていましたが、「サタスペ」そして「迷宮キングダム」という古さと新しさを両立させたこのシステムによって昇華したと私は感じました。

 そのデザイナー、河嶋陶一郎。
 彼の視線がどこにあるのか、それがSNEやF.E.A.R.とどう違うのか。それはこの座談会でも明らかです。彼らのシステムはゲームとしての基本的な楽しさ(数値とラックなど)と物語ることを強制しない範囲で用意してあって、尚且つ遊び手が自由に選択できる。
 この幅、この融通こそがTRPGの魅力だったはず。穴が広すぎるSNEでも、システマティックに完成しすぎたF.E.A.R.でもなく、その中間を生み出せる河嶋陶一郎さんという存在は、今の私にとっては大きいと再認識しました。

 もちろん他の三人もそれなりだとは思います。
 例えば中村知博は、言うまでもなくF.E.A.R.の現在の黄金期を形作った「トーキョーN◎VA The Revoltion」のサポート記事やシナリオ集を作った人。私自身も彼の作品から受けた影響は途方もなく大きいのは間違いありません。
 数年前まで私もまたこれ以上ないほど、そう。冗談でも何でもなく寝ても冷めても「N◎VA」というはまりっぷりでしたから。
 でも、それも数年前、新しくなるまででした。F.E.A.R.システムの流れに沿った、安全で安定したシステムになっていくN◎VAに私は付き合えなかった。だから今の私はN◎VAを始めとするF.E.A.R.システムから離れているし、毛嫌いしているといっても過言じゃない。

 でも、だからといってRLとしての中村さんが下手かというと、おそらく私が経験したコンベンションGMの中でも間違いなくダントツでトップの実力を持っていると思っています。それはN◎VAというやっかいで難しいシステムを乗りこなしたことで身に付けたルーリングと、それ以上に対人コミュニケーションの経験によって支えられているいっても過言ではなく。
 N◎VAというものが生み出したもっとも尖った人たちの一人なのでしょう。だからその言葉は今を持ってするどい。とりわけコミュニケーションについてはTRPGを遊ぶ誰もが感じる問題点。それに対しての姿勢は誰にも劣っていないとやはり感じるわけです。

 ところで余談ですが、この「N◎VA」は現在の冒険企画局のスタッフの中にもシナリオ原案に尚残すほどのN◎VA者がいます。今の冒険企画局もやはりN◎VAが存在しなかったらありえなかったことを考えてもN◎VAはすごかったと、そう思うのです。

 小林正規さんは、ローズ・トゥ・ロードという古いけど、魅力的なシステムを乗りこなしているのはすごいと思うんです。ただ、リプレイなんかを見ているともうちょっと落ち着いたマスタリングは必須じゃないかなぁとは感じます。
 とはいっても、物語るという姿勢に関してはやはりすごいものがあると言えるでしょう。その場にあわせた物語というのは口で言うほど容易なことではない。けど、それはTRPGと物語という関係ではひとつの夢であり理想なわけですから、それに向き合う能力はすごいと感心してしまいます。

 最後に北沢慶は…正直、高く評価できないんですよね。普通のオタクGMって印象以外なくて。六門リプレイも読んだけど、どうにも。一人だけ格下という感じでした。

 TRPGはコミュニケーションの遊び。それがTRPGの最大の魅力であり、問題点だとは思う。
 とりわけTRPGなんてことに惹かれてしまう人間は得てしてオタク的だってことも、それに拍車をかける。この場合オタク的なのはコミュニケーションに相互性を理解してないって考えればはずれじゃない。
 他者と関わることは現代の大きな問題のひとつだけど、その中でもやはり経験に乏しいオタクが集まるTRPG業界じゃ、しかたのないことかもしれないけれど。

 やっぱり「空気を読む」って当たり前のことが重要で、ようするに皆で楽しもうとしなくちゃダメだよってことなんだよね。
 …言い換えるとわがまますんなよ、という。
 ふぅ。